3つの機械移設時の注意点【据付、レベル出し調整作業・立形マシニングセンタ編】

MCの据付・レベル出し依頼のお客様「工場設備のレイアウトを変更したいので工作機械の移設準備と移設後の据付・レベル出しをお願いしたい…。移設後すぐに問題なく生産開始できるようにしてください」

このような依頼の実績を紹介しつつ、疑問にお答えします。

本記事の内容

  • 立形マシニングセンタの据付・レベル出し調整の依頼内容
  • 移設準備と移設後の作業内容
  • 3つの機械移設時の注意点

この記事を書いている私は、15年の大手工作機械メーカーでのサービスエンジニア歴2000件以上のメンテナンス実績をもとに、現在は独立してフリーランスのサービスエンジニアとして活躍しております。

「最近工作機械の移設を考えているんだけど、作業はどんな内容なのかな…。注意点なんかあるのかな…。」と考えてはいないでしょうか。

移設作業には本当に様々なケースがあります。工場内で少しだけ機械を動かすということから、海外への移設まで多岐にわたります。そのため移設ケースによって関わる業者も変わってきます。お客様が悩まれるのも理解できます。

今回はそんな工作機械の移設時の据付・レベル出し作業に関する内容です。

※3分ほどで記事は読む終わります。3分後には立形マシニングセンターの据付・レベル出し作業の流れを理解できるようになっています。

これから工作機械の移設を考えている方必見です。

今回のお客様は建築物に使われる部品を立型マシニングセンタで生産しておられます。

  • 立形マシニングセンタの据付・レベル出し調整の依頼内容
  • お客様からはこのような内容で依頼をいただきました。

    • 工場内での機械移設準備・移設後の据付・レベル出し
    • 周辺機器の接続と動作確認
    • 機械の動作確認
    • 問題なく製品を生産できるところまで確認してほしい

    機械移設準備の作業内容

    事前にお客様に伺い、移設準備を行いました。

    1. 静的精度の測定
    2. 原点復帰位置を控えておく
    3. 稼働軸の固定
    4. メイン電源落とし、工場ブレーカーを遮断
    5. クーラントを抜いていただく
    6. 周辺機器との接続を外していく
    7. クーラントタンク、チップコンベアの取り外し
    8. 移設時に邪魔になるカバーの取り外し
    9. ジャッキボルトの固定ナットを緩めておく
    10. 操作盤やドアなどを固定
    11. 画面など保護必要な個所に緩衝材を取り付け
    12. 取り外したボルトやカバーはなくならないようにまとめてマークしておく
    13. 整理整頓して作業完了

    移設時は機械の清掃には絶好のチャンスです。特にクーラントタンク内には、細かい切りくずやヘドロがたまっており、放っておくと機械に悪影響がでます。他にもカバーが外れた状態なので、いつもは手が届かない箇所、見えない箇所も清掃することができます。移設時には機械の清掃を強くオススメします。

    機械移設後の作業内容

    重量屋さんと機械移動を行った後、据付調整・レベル出し作業を行いました。

    1. 重量屋さんに少し遅れて現地到着。重量屋さんはいつも朝早いですね
    2. 機械、周辺機器の設置:お客様に確認とりながら重量屋さんと連携して指定の場所に機械を置く
    3. 本機をジャッキの上に置いた状態で、仮レベルを出していただく
    4. 本機の絶対レベルを調整
    5. 稼働軸の固定金具は取り外す
    6. 本機と周辺機器を接続
    7. メインの電源とエアをつないでいただく
    8. 工場ブレーカーオン。メイン電圧と三相交流回路の相回転を確認
    9. メインエアオン。エア漏れないか確認
    10. メイン電源、NC電源オン。機械立ち上げる
    11. 機械のねじれを調整
    12. 直角度の調整
    13. 静的精度を測定。移設前と比べて問題ないこと確認
    14. クーラント入れていただき、ポンプ関係のコネクタもすべて接続
    15. クーラントチェック。漏れがないか
    16. 全てのカバーを取り付ける
    17. 機械と周辺の清掃と整理整頓をして作業終了

    ※クーラントを入れるまでは、クーラントポンプ関係のコネクタは抜いておく必要があります。ポンプが空回りして焼き付く危険があるためです。

    3つの機械移設時の注意点

    機械を仮置きしておくならジャッキは全てきかせておく

    機械をいったん仮の場所に置いておいたり、レベル出し作業まで時間がかかったりと、仮置き状態でしばらく機械を置いておくことはあると思います。この時、ジャッキを適当に当てた状態で放置していると、機械のひずみが生じて移設後にうまく精度がでないことがあります。仮置きする場合は、仮レベルを出した状態でジャッキは全てきかせておきましょう

    三相交流回路は必ずチェック

    電圧と共に、三相回路の相回転のチェックは必須です。逆相の場合、謎の動作や、エラーにつながり思わぬトラブルに巻き込まれます。

    静的精度検査と原点位置は移設前にチェックしておく

    移設後の据付・レベル出し作業では、静的精度がうまく出ないときあります。移設前の測定データを控えていないと、何が原因なのかわからなくなってしまいます。

    また、電源を取り外して機械が原点復帰位置を忘れてしまうこともありますので、念のため控えておきましょう。

    P.S. 私は重量屋さんの移設作業を見るのがとても好きです。この機械ははたしてこの工場にはいるのだろうか…。この隙間に機械を置くのは無理なんじゃないか…。そんな気持ちをいつも良い意味で裏切っていただき、毎回見ていて感動します。

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