工場の漏電ブレーカーがなぜ飛ぶの?【工作機械の漏電箇所の特定方法】

工場ブレーカーが飛んでお困りのお客様「NC旋盤やマシニングセンタの電源を入れると工場ブレーカーが飛んでしまう…。機械稼働中にブレーカーが飛んでしまうことも…。工作機械の漏電箇所ってどう特定するの…。電気関係を触るのは何となく怖いな…。何とかしてください」

このようなトラブルに対する対処法や疑問について事例も交えて答えていきます。

本記事の内容

  • なぜ工場ブレーカーが飛ぶの?主な原因箇所まとめました
  • 漏電箇所の特定方法を解説
  • 電気作業をする際の注意点

この記事を書いている私は、15年の大手工作機械メーカーでのサービスエンジニア歴2000件以上のメンテナンス実績をもとに、現在は独立してフリーランスのサービスエンジニアとして活躍しております。

この記事を読んでいるあなたは、「工場ブレーカーが飛んでどうしようもない…。工作機械の漏電箇所を特定をしたいけど何をどうしたらいいのかわからない…。」こんなお悩みをお持ちなのではないでしょうか?

機械の稼働中に工場の漏電ブレーカーが突然落ちるとかなりびっくりしますよね。加工中に発生すれば、加工中のワークやツール、機械自体の故障などに繋がることもあります。できれば発生前に予防したいところですが、主な発生箇所を考えればなかなか難しいとも感じます。

※3分ほどで記事は読み終わります。3分後には、今までよりも工作機械の漏電に関する理解が深まっていると思います。

今回事例にあげるのは、一般機械部品の生産に使用されているマシニングセンタです。

工場の漏電ブレーカーが飛んでお困りの方必見です。

工場ブレーカーが飛ぶ原因のまとめ

工作機械の工場ブレーカーがトリップする原因としては、機械の100V、200Vラインの不具合による電気の漏れを、漏電ブレーカーが検知することにより発生します。

よくある主な漏電箇所としてあげられるのはこちらです。

  1. 各モーターへのケーブルの損傷及び断線
  2. モーター本体の絶縁不良
  3. コネクタやキャノンの不具合
  4. 制御盤ファンの故障

他にも100V,200Vラインを使用している機器があり、絶縁不良を起こしている場合に原因箇所となっている可能性がございます。しかし、私の経験からは工作機械の漏電に関して言えば、上記の箇所が主な原因だったことがほとんどです。

今回事例にあげたお客様では、加工中に漏電ブレーカーが落ちてしまったということでした。

漏電箇所の特定方法

漏電箇所の特定は地道な作業となります。

電気図面から100Vと200Vラインを特定し、特定したラインを端子台やコネクターなどでそれぞれ切り離し、アースとの絶縁抵抗が落ちている箇所がないかを一つ一つテスターで測定していきます

漏電しているラインが判明すれば、次はそのライン上のどこで絶縁抵抗値が落ちているかを探していきます。ケーブルとモーターを切り離してそれぞれ単体の抵抗値を測定していきます

テスターで測れるほど明らかに抵抗値が落ちている箇所が分かればいいのですが、それでもわからない場合はメガテスター(メガー)を用います。より大きな電圧をかけて抵抗値を測定する機器です。メガテスターを用いてより正確なモーターやケーブルの抵抗値を測定していきます。特にモーターの絶縁抵抗を測定する場合はメガーが必要になってくると思います。

もちろん最初からメガーで測定していってもいいのですが、私個人的には手軽にいつも携帯しているテスターをまずは用います。テスターだけで原因箇所が判明することが多いですし、コンパクトでいつも工具箱に携帯していることもあり、作業が早いと思うからです。テスターでだめならメガーという感じでいつも作業しております。

注意点:メガテスター(メガー)で測定する時は、必ず1次側の機器(特にモーターの制御ユニットに注意)を切り離すようにしましょう。大きな電圧が制御機器に流れて制御機器を壊してしまいます。

今回事例のお客様では、まずY軸のサーボモーターラインで絶縁抵抗が落ちているのが判明しました。そして、Y軸ラインを制御盤の端子部で切り離した状態で、モーター周りのカバーをばらしていき、モーターとケーブルの連結キャノンを外した状態でモーターとケーブルそれぞれ単体の抵抗値を測定しました。その結果、動力線の絶縁抵抗が低下していることが判明しました。ケーブルの交換作業行い不具合改善いたしました。ケーブルは被覆がめくれている箇所があり、その部分がフレキ内に接触する瞬間に漏電ブレーカーがトリップしていたと考えられます。

電気作業する際の注意点

まず電気作業をする際に一番に気を付けるなのは感電です。できる限り電気が来ていない状態で作業することと、作業時の装備や環境を工夫して身体に電気が流れずらい(感電しずらい)ようにしましょう。そのうえで、制御機器を壊さないことに十分注意する必要があります。具体的な電気作業時の注意点を下記にまとめました。

  1. 工場ブレーカーを遮断した状態で作業を行う
  2. 濡れた手や測定器を使用しない。床もクーラントなどで濡れているときも注意が必要です。
  3. 電気作業用のゴム手袋をして作業する。作業内容にもよりますが、オススメは細かい作業もできる低圧電気グローブです。
  4. 絶縁の安全靴で作業する。なるべく絶縁効果の高いものを選ぶようにしましょう。
  5. 胸ポケットに工具やペンを入れた状態で作業しない。(制御盤での作業中に、胸ポケットに入れていたレンチが思わぬ場所に落ちてショートを起こしていまい、大きな火花と光が発生してしばらく目が見えなくなった方もいます。)
  6. メガテスターを使用する場合には1次側の機器を必ず外すようにする。

漏電のことや絶縁抵抗のことに関しては、昔学校で習った記憶があるとは思います。しかし、なんとなくしか覚えていないのではないでしょうか?電気作業では、持っている電気に関する知識を、しっかりとイメージできるところまで持っていくことが大切です。イメージが湧くところまで一度電気に関して学んでみれば、なんとなく電気作業は怖いなということはなくなると思います。