絶縁抵抗とは?【メガテスターの使い方とモーターの絶縁測定】

絶縁抵抗についてお悩みのお客様「絶縁抵抗って何…。どうして計測する必要があるの…。どうやって測定すればいいんだろうか…。誰か教えてください」

このような疑問にお答えしていきます。

本記事の内容

  • 絶縁抵抗とは何か
  • 絶縁抵抗を計測する理由
  • 抵抗器ってどんな仕組み
  • 絶縁計測について(対アース絶縁抵抗と線間抵抗)
  • 絶縁抵抗の分類と計測方法について解説
  • モーターの絶縁抵抗の測定方法と必要性

この記事を書いている私は、15年の大手工作機械メーカーでのサービスエンジニア歴2000件以上のメンテナンス実績をもとに、現在は独立してフリーランスのサービスエンジニアとして活躍しております。

この記事を読んでいるあなたは、「絶縁抵抗ってよく耳にはするけどよくわからない…。そもそも絶縁抵抗を測定する意味はなんなのだろうか…。」このようなお悩みをお持ちなのではないでしょうか?

工作機械などの工場設備の修理や保全において、電気機器の良否を判断するためには絶縁抵抗を計測する必要がでてくると思います。

しかし電気作業はイメージしずらい部分であるため、よく理解できていない状態のままなのではないでしょうか?

感電や機器の故障、漏電のといったリスクのある作業となります。この機会に原理原則を理解し、イメージを持って作業に臨むようにしましょう。

5分ほどで記事は読み終わります。5分後には、今までよりも絶縁抵抗やメガテスター関する理解が深まっていると思います。

絶縁抵抗についての疑問を持たれている方必見です。

絶縁抵抗とは

結論から言うと、絶縁抵抗とは電気が外部に漏れない性能(絶縁性)を数値化したものとなります

電流の流れにくさを表したものが電気抵抗です。抵抗値が大きいほど電流が流れずらいということを表します。

電気機器は外部に電気が漏れて感電や漏電をしないようにする必要があります。電気を流したいところには流し、流したくないところには流さないようにするということです。そこで導体から外部に電気がもれないように絶縁するのに用いられるのが、抵抗値の高い絶縁体となります。

導体である銅の抵抗率が1.68 ×10−8[Ω・m]である一方で、代表的な硬質ゴムの低効率は1013[Ω・m]です。数値でここまで大きな違いがあることがわかります。

どうして計測する必要があるの?

電気は必要な箇所にだけ供給される必要があります。

漏電(意図しない場所へ電気が漏れ出てしまう)してしまうことによって、感電や周囲の機器の故障や、最悪の場合は火災の原因になることもあります。そのため、絶縁物で導体を保護(絶縁)しているのですが、その絶縁物がずっと安全というわけではなく、年々劣化してしまうのです。その劣化具合を調べるために絶縁抵抗を計測します。

抵抗計の仕組みについて

抵抗計の仕組みは、計測器内部で定格電圧を発生させて測定物へ電圧を印加し、そこに流れる電流値を測定して、オームの法則によって抵抗値を求めています。

これらのことは学校で習ったり実験した記憶があるのではないでしょうか。懐かしいですね。

絶縁計測とは

  • 絶縁計測とは、導体の絶縁体が高い抵抗を持っているのかを調べることです。絶縁の抵抗が高ければ電流を外に漏らすことはありません。
  • 絶縁が良好な状態の抵抗値は∞メガオーム、絶縁がまったくされていない状態では0オームとなります。

低圧の電路の絶縁性能は、電気設備に関する技術基準を定める経済産業省令の第3章-第58条にて規定されています。

(低圧の電路の絶縁性能)

58電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の表の上欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上でなければならない。

電路の使用電圧 絶縁抵抗
300V以下対地電圧150V以下 (100/200V)0.1MΩ以上
 対地電圧150V超過 (三相200V)0.2MΩ以上
300V超過 (三相400V) 0.4MΩ以上

対アース絶縁抵抗(対地絶縁抵抗)

電路や機器のアースに対して絶縁抵抗が良好かを計測します

対アースの絶縁が悪い状態を「地絡している」と言います。

絶縁抵抗計の片方をアース極に接続し、チェックしたい配線にプローブを当てて計測します。

線間の絶縁抵抗

導線間の絶縁抵抗を計測します。

線間の絶縁が悪いということは、短絡状態になっている可能性があります。ショートによるトラブルや短絡事故を防ぐために確認します。

絶縁抵抗計(メガテスター)の特徴と注意点

液晶画面に数字を表示するデジタルタイプと、針が振れるアナログタイプのものがあります。

内臓の電池の電圧を昇圧して、測定用のプローブから流して漏れ電流から絶縁状態を測定します

計測には直流電流を使用します。交流電流では静電容量の影響を受けてしまうので絶縁抵抗を正確に計測することができないためです。

計測するときは電路を開閉器または課電遮断機で区切り、電路ごとに測定を実施しなければなりません

上部のブレーカーをオフにするなどの準備が必要ということです。

半導体は絶縁抵抗計の高電圧によって破損する可能性があるので計測する回路に半導体を含む機器がある場合は回路から切り離す必要があります。

絶縁抵抗の分類と計測方法

MCB(サーキットブレーカー)と電磁開閉器(マグネットスイッチ+サーマルリレー)とモーターの回路にて説明していきます。

測定手順

  1. 被測定物に印加しても良い適切な定格測定電圧を選ぶようにします
  2. 本体の動作確認のために、アース端子とテスト端子の先端をショート(短絡)させた状態で測定ボタンを押して、測定値が0MΩになることを確認する。
  3. 調べたい回路のみに絶縁抵抗計を当てたいのと活線状態では計測できないため、MCBをオフにしておきます。

対アースの測定

  1. まずは絶縁抵抗のクリップをアース極にとります。テスト端子をクリップとは別の場所のアースにあてて0MΩが表示されればアースがとれています。0MΩにならない場合は正しく測定できないのでアースを他の場所に取り直す必要があります。絶縁抵抗測定では確実にアースを取るようにしましょう
  2. 地絡部分では、メガテスターのアースクリップと測定しているプローブの間で回路が成立することになります。この抵抗値が高いか低いかを計測して絶縁抵抗を判断します
  3. 電磁接触器の2次側の端子に赤色のプローブを1相づつ順番に当てていきます。モーターの内部でそれぞれの配線につながっているので、基本的には3相とも同じ数値になります。回路のどこかに断線箇所があることが考えられるので3相とも計測して確認します
  4. 0MΩ(もしくは近い数値)になっている場合は、どこかで被覆がむけたり、クーラントで浸水している可能性があります。
  5. この状態で運転した場合には、使用しているブレーカーによって違いが出ます。地絡検出機能付きの漏電ブレーカーであれば地絡を検出してブレーカーをトリップさせますが、地絡検出機能がない場合はブレーカーがトリップすることはありません。

同じ数値にならない場合

どこかに断線箇所があるケースだと絶縁抵抗の数値にばらつきができます。

その断線箇所がモーター内部である場合は外観ではわからないのでマルチテスターでモーターのそれぞれのコイル抵抗を計測してどれが断線しているかを診断します。

ただ、断線している場合はモーターが欠相運転になり、残っている2相の電流が増えます。この状態で運転すると、サーマルリレーがトリップしてモーターを保護します

線間絶縁抵抗

ケーブル同士の絶縁状態を確認します。ケーブルそれぞれにアースとプローブをあてます。

モーター内部で接続されているのでそのまま計測すると0MΩになるので、モーターの配線は解線してから計測します。この状態でマグネットスイッチの2次側からモーターの1次側の線間の絶縁が測定できます

3相すべての組み合わせを計測します。この計測値が0MΩ(これに近い数値)では配線同士が短絡状態にあることになります。ショートによる火花の発生が、火災などの災害に繋がったり、電気が他の配線に流れて意図しない機器の誤作動、誤検出、故障を引き起こす可能性もあります。

モーターの絶縁抵抗測定

工作機械の修理においては、漏電ブレーカーが飛ぶといった場合以外にも、モーターの絶縁抵抗測定が必要になるケースがあります。主軸および各軸のサーボアンプ交換する時で、モーターの漏電が原因でサーボアンプを再度破損する場合があるためです。これを防ぐために、サーボアンプ交換時には、必ず事前にモーターの絶縁を測定しましょう。

測定方法

  • 対象のモーターの動力線をすべて外す
  • メガテスターは対象物に高圧に印加するため、プリント板等にダメージを与えないようにしなければなりません。
  • モータ側の各動力線とアース間の絶縁抵抗を測定する。アンプ側は絶対測定してはいけません。
  • 500MΩ以上から無限大(∞)で正常です。実際には10MΩ以上あれば、劣化はしていますが使用可能と判断します。
  • 10MΩ以下の場合、モーターの絶縁が劣化し、漏電しているのでモーター交換等の処置が必要です。
  • テスターで測定する場合、抵抗値が無限大(∞)でない場合、モーターの絶縁が劣化していると判断します。
  • アナログのテスターの場合、Ωレンジの最大(×100)を選択し、針が少しでもふれればNGです。
  • 絶縁が劣化している場合、モーターと動力線を中継ボックスなどで切り離してそれぞれの絶縁を確認する必要があります。
  • モーターの劣化ではなく、パネルから中継ボックスの間のケーブルが絶縁不良をおこしている場合があります。

これらの知識が、工場設備の保全業務には必要になってくると思います。分かりずらい部分もあるとは思いますが、しっかりとイメージできるところまで理解するようにし、絶縁抵抗の測定に臨むようにしましょう。

安全よし!