工作機械の日常点検まとめ【管理アプリ紹介】NC旋盤やマシニングセンタの予防保全!
工作機械の日常点検でお悩みの方「工作機械の日常点検って何をやればいいの…。むしろ点検やる必要ってあるのかな…。忙しいし、面倒でなかなか実行できない…。誰か具体的に教えてください。」
こういった疑問に答えしていきます。
本記事の内容
- 工作機械の日常点検項目まとめました
- 日常点検が必要な理由を点検項目ごとに解説
- スマホアプリを使った画期的な点検管理方法を紹介
本記事の信憑性
この記事を書いている私は、15年の大手工作機械メーカーでのサービスエンジニア歴と2000件以上のメンテナンス実績をもとに、現在は独立してフリーランスのサービスエンジニアとして活躍しております。
動画解説:工作機械の日常点検【やらずに故障に繋がる点検トップ3】
本記事の点検項目の中から厳選したトップ3を動画で解説しております。文字情報よりも頭に入りやすいと思います。
「NC旋盤やマシニングセンタなどの工作機械の日常点検は大切だとは言われるけど、いったい何をやればいいんだろう…。毎日チェックしているこの面倒な点検作業は何のためにやっているんだろう…。」こんなこと思ったことはありませんか?
その気持ち私も非常にわかります。誰も詳しく教えてくれないし、目的のわからない単純作業はつらいですよね。しかし、お客様先で修理業務していると、「日常点検をやっていればこのマシンダウンや高額修理費は避けられたのにすごいもったいないな」と思うことが本当に多かったのも事実なのです。
そんな私が、工作機械の日常点検について詳しくお話してまいります。
※5分ほどで記事は読み終わります。5分後には、今までよりも工作機械の日常点検のお悩みがよりクリアになっています。
工作機械の日常点検で悩んでいらっしゃる方必見です。
- 1. 工作機械の日常点検項目まとめ
- 2. 日常点検が必要な理由を点検項目ごとに解説
- 2.1. エア圧力確認・エア機器のフィルター清掃・ドレンの点検
- 2.2. 潤滑油・グリースポンプの圧力確認、潤滑油量やグリース量の点検
- 2.3. 油圧圧力・油圧ユニットの油量・油の状態・フィルターの点検
- 2.4. 冷却装置の冷却油量とフィルターの点検
- 2.5. 制御盤ファンや制御盤クーラーの動作確認とフィルター清掃
- 2.6. クーラント量の確認とクーラント状態点検
- 2.7. ミストコレクターのフィルター点検と清掃
- 2.8. 各移動軸のワイパー点検と交換
- 2.9. 非常停止ボタンの機能点検
- 2.10. 軸や主軸の異音
- 2.11. 各種ギアオイルの点検
- 2.12. 日常点検全般に言えることは
- 3. スマホアプリを使った画期的な点検管理方法を紹介
- 3.1. 860円のスマホアプリで日常点検を簡単に管理できる時代になりました。
- 3.2. 通常の日常点検の実施方法は?
- 3.3. 点検管理アプリの紹介
工作機械の日常点検項目まとめ
- エアの圧力確認
- エア機器のフィルター清掃
- エア機器のドレン抜き(水を排出)
- 潤滑油・グリースポンプの圧力確認
- 潤滑油量・グリース量の点検
- 油圧の圧力確認
- 油圧ユニットの油量の点検
- 油圧油の状態点検
- 冷却装置の冷却油量の点検
- 冷却装置のフィルター清掃
- 制御盤ファン・クーラーの動作確認
- 制御盤ファン・クーラーのフィルター清掃
- クーラントタンクのクーラント量の確認
- クーラントの状態点検
- ミストコレクターのフィルターの点検と清掃
- 各移動軸のワイパー点検
- 非常停止ボタン機能の点検
- 軸移動時の異音点検
- 主軸回転時の異音点検
- ギアオイルの油量の点検
点検の実施期間に関しては、機械の使用状況によって大きく変わってきます。24h稼働している機械と、週3回4h稼働する機械では、点検実施期間は違いますし、工場環境や加工物の材質などによっても変化してきます。手間ではありますが、それぞれの機械状況に応じた点検の実施期間を調整していきましょう。
機械によって点検内容大きく変わってきます。機械ごとの点検項目に関しては、メーカーのマニュアルに記載されているものが参考になります。一度目を通して日常点検に取り入れたいです。しかし、マニュアル上の実施期間はかなりシビアで現実的ではない場合も多いので注意です。
日常点検が必要な理由を点検項目ごとに解説
なぜ日常点検が必要なのか、それぞれの点検項目ごとに細かく解説していきます。
エア圧力確認・エア機器のフィルター清掃・ドレンの点検
エア漏れなどで、エア圧が規定値以上ない場合はアラームが発生して教えてくれますが、アラームが出ない程度にエア圧が落ちた状態でも、機械の動作不良につながることがあります。エアフィルターの汚れにより、エア圧が上がらないケースもございます。
機械への供給エアが汚れていると、エアシリンダやエアソレノイドなどのエア機器の故障につながります。その他に、主軸へのエアパージや潤滑エアなどにもエアは使われており、エアの汚れにより主軸の不具合につながることもあります。
エアに水分が多い場合も同様の故障につながるので、エアのドレン対策も大変重要です。エアガンのエアの水分が多い、エア機器のドレンに水がすぐ溜まると思われている方はしっかりと対策しましょう。
ドレンに関してはよくわからない方はこちらの記事が参考になると思います。
エアの汚れや水分はエラーが出ません。知らないうちに大きな故障に繋がったり、せっかく直してもまた壊れるといったことを繰り返すことがあります。特に主軸の不具合につながると、マシンダウンが長期化し、修理コストも高額になります。そういった修理に遭遇するたびに、もったいないなと思います。エア関連の日常点検はけっして難しくはないので、日々の点検にぜひ取り入れたいですね。
潤滑油・グリースポンプの圧力確認、潤滑油量やグリース量の点検
潤滑油やグリースは、摺動面、リニアガイド、ボールねじ、心押し軸の出入りなどの動作部分に広く使われています。上手く供給されていないと、動作部分の劣化や不具合につながります。どれもマシンダウンと高額な修理費に繋がるので避けたいところです。
潤滑油やグリースの圧力や油量はセンサーで監視されているため、基本アラームで知らせてくれます。
潤滑油の減る早さには注意が必要です。減るのが早い場合は、潤滑油漏れや分配器の動作不良の可能性があります。減るのが遅い場合は、潤滑油経路が詰まっていたり、分配器不良の可能性があります。
グリースの補充頻度にも注意です。補充頻度は潤滑油に比べれば少ないです。しかし補充あまりにもしていない場合は、ポンプのところでグリースがすり鉢状に減っていて、グリースがうまく供給できていないことがありますので、たまにグリースを棒でかき混ぜたりしましょう。補充が頻繁になってきた場合はどこかで漏れている可能性もあります。
油圧圧力・油圧ユニットの油量・油の状態・フィルターの点検
油圧圧力と油量に関してはアラーム発生して機械は止まります。
油量の減りが早い場合は、油圧機器や、接手などから少しずつ漏れが発生している可能性があります。特にチャックのアンクランプシリンダーの油漏れはクランプ力に影響するので注意が必要です。
油圧回路フィルターの清掃や交換、油圧油の定期的な交換などをしていないと、油圧回路内にゴミやコンタミが発生たり、油の粘度の変化や劣化が進みます。そのことにより、ソレノイド、油圧シリンダー、油圧ユニットなどの油圧機器の不具合につながります。
定期的に点検していれば防ぐことが可能な修理も多いです。油圧部品はどれも高額なものが多いので、できるだけ修理は避けたいですね。
冷却装置の冷却油量とフィルターの点検
冷却装置には油量のレベルセンサーがついていないことが多いので注意が必要です。通常すぐに減ってくる油ではないのですが、少しずつ減ってきます。減りが早い場合は接手などからにじみ出ている可能性があります。
フィルターが汚れていると、ファンが回っても冷却機能がうまく働かず、冷却ユニットの故障につながります。長期マシンダウンと高額修理に繋がってしまいます。
制御盤ファンや制御盤クーラーの動作確認とフィルター清掃
制御盤のファンは止まっていてもアラームが出ない機械も多いため、定期的に点検する必要があります。特に夏場は熱がこもって制御盤内が高温となり、制御機器の故障につながります。パソコンのファンが回っていないと熱くなって壊れてしまうのと同じです。
制御盤フィルターの掃除をしないと汚れた空気が制御盤内に侵入し、制御機器の不具合につながります。定期的な掃除や交換が必要です。
ファンやクーラーが故障した時の応急処置として制御盤を開けて扇風機を回す方もいらっしゃいます。ゴミが入ってしまうので長期実施はお勧めできませんが一定の冷却効果があります。
クーラント量の確認とクーラント状態点検
クーラント量はフロースイッチで監視されており、アラーム発生します。しかし、たまにフロースイッチが固着してしまい反応しなかったりするので注意が必要です。クーラント周りのスイッチはどうしても壊れやすいです。
クーラントの状態は、機械へのダメージに影響し、機械寿命が変わってきます。また、細かい切りくずがタンク内に溜まっていると、クーラントポンプの故障やクーラント経路が詰まったりと思わぬトラブルに繋がります。定期的に点検・清掃・交換を行い、できる限りクーラントを良い状態で保ちたいです。
ミストコレクターのフィルター点検と清掃
ミストも機械へのダメージに影響します。また、工場の空気をクリーンに保って作業環境を整えることも大切です。
この作業を行ったことがある方はご存知かと思いますが、ミストコレクターのフィルターはかなりべとべとになっているため、清掃はけっこうタフな作業です。しかし、工場環境と機械のためにもきれいな状態で保ちたいですね。
各移動軸のワイパー点検と交換
ワイパーの存在は地味なのですが、非常に大切な役割を担っております。
ボールねじやベアリング交換などの送り軸関係の修理は、ワイパーが悪くなったまま放置して、クーラントや切りくずが送り軸関係に侵入して発生することが本当に多いです。
日常点検に取り入れていないお客様も多いので、点検項目には必ず追加するようにしましょう。
非常停止ボタンの機能点検
24h体制のお客様で、「電源入れっぱなし。インターロック解除したまま」なんてことはないでしょうか?
サーボが常にオンした状態だと、重力軸のブレーキが悪くなっていていることに気づかず、非常停止などでサーボオフした時に重力軸が落ちてくる可能性があります。安全や事故防止のため、非常停止機能は定期的に点検するようにしましょう。
軸や主軸の異音
毎日聞いていると、音の変化に意外と気づきずらいものです。不良品を出したり、マシンダウンになる前に早めに対処できるよに、定期的に点検するようにしましょう。
異音は何かの不具合の前兆の可能性があります。機械の声に耳を傾けることで、機械の異常を早い段階で察知することができます。
各種ギアオイルの点検
機械によりますが、ATC機構などにギアオイルが入っています。このオイルは見ずらい箇所の場合も多く、点検を忘れがちです。知らないうちにギアオイルがなくなっていて、ギアボックスの不具合につながることもあります。マニュアルを確認し、ギアオイルの点検箇所を忘れていないか確認しましょう。
日常点検全般に言えることは
アラームが出て止まるのも困るのですが、アラームが出ずに知らないうちに大規模な修理に繋がっているパターンが怖いです。
点検リストを日々改善しながら作り上げていき、日常点検作業をより効果的なものとしていきましょう。
スマホアプリを使った画期的な点検管理方法を紹介
860円のスマホアプリで日常点検を簡単に管理できる時代になりました。
ここまで読んだあなたは、日常点検が大切なことはお判りいただけたと思います。しかしもしかすると、「とはいっても忙しいし、面倒でそこまで実施することできません」と思われているかもしれません。それでも大丈夫です!私も多くのお客様を見てきて、その忙しさは十分承知しております。そんな私から860円スマホアプリを使った画期的な日常点検の管理方法をご提案します。
通常の日常点検の実施方法は?
大手企業でよく見かけるのは、「保全の専属の担当者が点検項目や日数を考えてExcelの日常点検リストを作って、各機械に紙のリストをマグネットで貼り付け、オペレーターが毎日チェックを入れる」というやり方です。そのリストを保全や上司がチェックして支持を出します。リストに修正項目があれば作り直して全てを入れ替える必要があります。この手法はかなり手間がかかるので専属の担当者がいなければ管理が難しいです。小さな会社でやられているのをあまり見かけないのも納得できます。
点検管理アプリの紹介
このアプリは元々は家事を家族で管理するためのものです。大変使いやすく、我が家でも3年ほど愛用しており、今までできていなかったエアコンフィルター掃除など忘れがちな個所も家族で協力してできるようになりました。
このアプリを工場設備の日常点検に応用します。設備ごとにカテゴリーを分けて、点検項目、実施期間、担当員、などの細かい設定まですることが可能です。後から修正するのも非常に簡単で、日々の点検をしながら、点検項目や実施期間を調整していくことができます。そうやって日々アップデートしていく日常点検リストは、点検項目・実施期間共にベストなものに仕上がっていくでしょう。また、このアプリのすごいところは、共有までできることです。上司も一目で今日の点検の実施内容や実施されていな項目を知ることができます。これだけの機能が使えて860円はかなりお得だと思います。
アプリの詳細はこちら。
大規模なシステムを導入しなくても、知恵と工夫でなんとかできる便利な時代になりました。時代の変化は速くなってきており、アップデートを怠ると、後から追いつくのが難しいです。今この時に行動を始めて、時代の先を走っていきたいですね。